カテゴリ:業界ニュース / 投稿日付:2021/11/26 09:28
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「人の死の告知に関するガイドライン」を公表
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2021年10月8日、国土交通省は「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表した。人の死が発生して「心理的瑕疵あり」とされた不動産(いわゆる事故物件)の取引に対し、宅建業者の取り扱いの判断基準が国によって初めて示された。ガイドライン策定の背景や内容のポイントを解説する。
ルール未整備がもたらしていた課題
「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(以下、「ガイドライン」)は、国交省の「不動産取引に係る心理的瑕疵に関する検討会」(座長=中城康彦・明海大学不動産学部長)が取りまとめた。
宅建業者には、取引相手の判断に重要な影響を及ぼす事項を告知する義務がある。しかし、死亡事案が発生した不動産の取り扱いには、これまで明確なルールは存在しなかった。死亡の事実が入居者の判断に重要な影響を及ぼすかどうかという判断基準がなかったために、宅建業者は裁判例などを参考に個別対応するしかなく、心理的瑕疵物件には常にトラブルの不安がつきまとっていた。
また、ルールの未整備は、単身高齢者の住宅難の原因にもなっていた。検討会の資料によると、約8割もの賃貸オーナーが高齢者の入居に拒否感を示している。単身高齢者が所有物件で死亡すると、老衰や病死でも事故物件扱いされるのではないか、告知すれば賃料の減額請求の理由にされてしまうのではないかという不安がオーナーの拒否感につながり、単身高齢者がなかなか住まいを確保できない事態を引き起こしている。
検討会がガイドラインの策定を目指した背景には、こうした課題があった。今年5月に示されたガイドライン案に寄せられた意見(パブリックコメント)は218件。200件超のパブリックコメントは大きな反響であり、国民の関心の高さがうかがえる。
告知しなくてもよいケースを明確化
このガイドラインは、一戸建てやマンション・アパートなど居住用不動産を対象にしている。主なケースと契約形態別の告知の必要性を図表にまとめた。
宅建業法上は、「宅建業者は、人の死に関する事案が、取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合には、これを告げなければならない」というのが原則。これをベースとして、ガイドラインでは「告げなくてもよい場合」を明示した(図表の×部分)。告げなくてもよい場合以外は、取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合は、告知が必要となる(図表の〇部分)。老衰や病死(図表の①)が告知不要と明らかにされたことは、単身高齢者が入居を拒まれない環境を目指すうえでは大きな一歩といえる。
便宜上、③を設けたが、ガイドラインでは他殺や自殺の告知を明記していない。ガイドラインはあくまで「告げなくてもよい場合」を示していて、「告げなくてもよい場合」のほかは原則どおりという構成だ。
5月のガイドライン案では他殺・自殺を「告知すべき内容」とはっきり記していたが、パブリックコメントで「自殺に対する偏見を助長する内容」との指摘があったことを受け、表現の仕方が修正された。
買主・借主に告知する場合は、事案の発生時期(特殊清掃等が行われた場合は発覚時期)、場所、死因(自然死・他殺・自死・事故死等の別。不明の場合はその旨)、特殊清掃等が行われた場合はその旨を告げる。死亡した本人やその遺族などの名誉、生活の平穏に十分配慮する必要があり、死者の氏名、年齢、住所、家族構成や具体的な死の態様、発見状況などは告げる必要はない。また、買主・借主に告知する場合は、後日のトラブル防止のため「書面の交付等によることが望ましい」とされている(ガイドラインより)。
宅建業者の調査義務の範囲も明らかに
ガイドラインは、媒介を行う宅建業者の調査の範囲も明らかにした。宅建業者は、売主・貸主に対し、物件状況等報告書やその他の書面(告知書等)に過去に生じた事案について記載を求めることで「媒介活動に伴う通常の情報収集としての調査義務を果たしたものとする」(ガイドラインより)とされた。宅建業者が自ら周辺住民に聞き込みをしたり、インターネットサイトを調査したりする義務はない。
したがって、トラブル防止の観点から告知書等の重要性が高まる。宅建業者は、「売主・貸主に記載が適切にされるよう助言することが望ましい」(同)とする。同時に、故意に告知しなかった場合などは、民事上の責任を問われる可能性があることを宅建業者から売主・貸主に伝えることも重要だ。告知書等に売主・貸主からの告知がない場合にも、人の死に関する事案の存在を疑う事情があるときは、宅建業者は売主・貸主に確認する必要がある。たとえば、管理会社から死亡事案があったことを宅建業者が聞いていた場合に、告知書等に記載がなかったときには、売主・貸主にその事実を伝えないと宅建業法違反になる。
ガイドラインは、人の死が起きた居住用不動産に対して、宅建業法上宅建業者が取るべき対応と、同法の義務の解釈を整理している。位置付けとしては「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」と同じものになる。守らなかったからといって、ただちに宅建業法違反となるわけではないが、トラブルになった場合は、行政庁での監督にあたってガイドラインが参考にされる。
国交省「しっかり読み、トラブル未然防止を」
国交省は「ガイドライン本文にはさまざまな留意点等を記載している。事業者の皆さまには、具体の事案や買主・借主の意向等を踏まえて対応いただくこととなるが、ガイドラインをしっかり読んでご理解いただき、トラブルの未然防止につなげていただきたい」(不動産・建設経済局 井﨑信也・不動産業課長)と呼びかける。
最後に、ガイドラインで整理されなかったケースが残されていることに注意したい(⑥~⑧)。これらは一般的に妥当と整理できるだけの裁判例や取引実務の蓄積がなかったため、ガイドラインの対象に含まれず、引き続き個別の判断になる。ガイドラインは事例の蓄積を踏まえて、適時見直しが図られる予定で、⑥~⑧は今後の事例蓄積の先の判断となる。
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本日は以上となります。
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