カテゴリ:業界ニュース / 投稿日付:2022/06/23 17:14
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2022年の公示地価を読み解く
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公示地価は1月1日時点における全国の特定地点(2022年〔令和4〕の調査地点は約2万6,000地点)の1平方メートルあたりの単価を示すもので、1970年(昭和45)から毎年公表されています。
2022年の公示地価の全体像としては、「回復基調にあるものの、コロナ前の水準を完全に回復するまでには至らない」という状況でした。
2021年(令和3)は全用途において前年比マイナスになりましたが、2022年は徐々に景気が回復局面に入りつつあり、かつ低金利が続いていることから、住宅地において住宅需要が高まり、マンション用地などへの需要も回復してきました。それが地価の回復に一役買ったものと思われます。
ただ、現時点に至ってもまだインバウンド需要は完全には回復しておらず、商業地の回復の足を引っ張るかたちとなりました。用途別にいえば、住宅地と工業地はコロナ前の水準をほぼ取り戻したといってもいいでしょう。
住宅地、工業地に比べて商業地の戻りが鈍い
地価変動率の推移を見ると(図表1)、2022年の住宅地変動率はおおむね2021年の下落率を上回る上昇率を示しています。これは新型コロナウイルスの感染拡大を受けて大きく下落した2021年以前の水準を回復しつつあることを意味します。これと同じことは工業地にも当てはまります。
一方、戻りが弱いと思われるのは商業地です。たとえば東京圏の場合、2021年が前年比で−1.0%であるのに対し、2022年は+0.7%でした。確かに上昇には転じているものの、コロナ前の水準はまだ取り戻せていないことがわかります。これと同じことは、大阪圏にも当てはまります。
図表1で、地価変動率を地域別に見ていくと、東京圏は全用途平均が+0.8%で、住宅地は+0.6%、商業地が+0.7%となりました。図表にはありませんが、内訳を詳細に見ると、住宅地は23区すべてにおいて上昇へと転じ、なかでも港区や目黒区では上昇幅の拡大が確認されました。
次に大阪圏ですが、全用途平均が+0.2%で、住宅地が+0.1%、商業地が前年比で変わらずという結果になりました。大阪圏の商業地は下落こそ止まったものの、上昇の強さに欠ける動きとなっています。
インバウンド需要が戻らないと大阪圏の商業地は苦しい
大阪圏の商業地では、インバウンド全盛だったコロナ前の上昇率は非常に高く推移しており、2018年の+4.7%、2019年の+6.4%、2020年の+6.9%というように、東京圏に比べても高い水準で推移していたのです。つまり2022年の変動率が、下げ止まったとはいえ上昇に転じないのは、インバウンド需要が現状、まだ冷え込んでいるからだと思われます。
やはり図表にはありませんが、その内訳を詳細に見ると、大阪圏のなかでも大阪市の商業地はかなり厳しく、マイナス圏から脱せない状況が続いています。2021年の-4.4%に比べて下げ率は縮小したものの、それでも-1.1%でした。
ところが、これとは逆に京都市の場合、2021年が-2.1%だったのが、2022年は+0.7%になり、コロナ前の水準は奪還していないものの、地価は上昇へと転じています。これは、京都市が観光地としてインバウンド需要だけでなく、日本人観光客からも支持されていることと無縁ではなさそうです。
京都市も大阪市と同様、インバウンド需要が戻らない現状において厳しいのは同じですが、インバウンド需要に頼り切った大阪市に比べ、京都市は日本人観光客を呼び寄せる観光資源があるので、大阪市に比べて回復が早かったと考えることができます。
三大都市圏以上に地方四市の上昇率は大きい
次に地方圏について見てみましょう。札幌、仙台、広島、福岡という「地方四市」においては、コロナ禍の影響が色濃く反映された2021年でさえ、全用途だけでなく住宅地、商業地、工業地のいずれもがプラスでした(図表1)。
とはいえ、用途別に見ると多少、まだら模様の部分があります。住宅地の上昇率は、コロナ禍の影響が出る前の2020年とほぼ同じ水準まで戻ってきましたが、商業地は2020年の上昇率が+11.3%もあったこともあり、同水準までは追いつけていません。
ちなみに、図表にはありませんが、地方四市のうち札幌市の住宅地の強さが目立ち、前年比で+9.3%になり、かつ札幌市内にある305地点は一部地点が横ばいであった以外はすべて上昇しました。
年後半の上昇率が高いことからも回復傾向がうかがわれる
なお、年1回、1月1日時点の地価を調査する公示地価に対し、7月1日時点の地価を調査する「都道府県地価調査」は、中間時点での数字になりますが、その共通地点における地価変動率の推移を見ると、住宅地も商業地も、前半(7月1日の都道府県地価調査)に比べて後半(1月1日の公示地価)の上昇率が高くなっており、この点からも地価は回復基調にあることがうかがわれます(図表2)。
今後の見通しですが、注目材料はインフレの動向です。常識的な水準でのインフレであれば、それに連動して地価上昇の可能性は高まりますが、あまりにもインフレが昂進してしまうと金利が大きく上昇し、不動産市況にとってネガティブな影響が及ぶ恐れが生じてきます。ウクライナ紛争が資源価格に及ぼす影響など、当面、インフレ要因からは目が離せません。
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本日は以上となります。
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